設計理念

建築家の職能は、社会的背景(経済性・流行性)を常に念頭におき、普遍性のある信念と依頼者の要請により、建築生産を公正に進める統括者です。

その本質は、マネージメント業務にあり、デザインもその延長線上にあるといっても過言ではありません。

社会的背景により、建築生産の命題が変化し、要求されるプログラムが多様化してきています。一時代前には、 建築家はデザイナーや技術者に特化する傾向が際立っていましたが、昨今においては、PM(プロジェクトマネージメント)、 FM(ファシリティマネージメント)、CM(コンストラクションマネジーメント)など、建築生産管理、維持管理や資産の運用管理なども重要な職能となってきています。

現在、社会的背景は国際標準化や構造改革の推進により、従来の社会の枠組が大きく変わりはじめています。 また、リサイクル法の整備など環境保全の観点からも消費型社会から循環型社会へと向かっています。

少子高齢化の到来、製造産業の空洞化、公共事業の縮小など、成熟した社会に向かって、建築を取り巻く社会情勢はますます厳しいものになるのは明らかです。

このような状況の中で、建築生産は、スクラップ アンド ビルドからストック アンド リノベーションへと大きく変化を遂げはじめています。

これからの建築にはデザイン性の良さは当然のこと、機能性の高さ、長寿命、メンテナンスの容易さ、柔軟な利用性や周辺環境への配慮が求められています。

また、依頼者や利用者のニーズも多様化し、PMやCM等のコスト管理をはじめ建築生産に関わるあらゆる 要素を効率的に統合して、ニーズに的確に応えていくマネージメント能力が必要となります。

これらは、建築家の職能の一部が時代のニーズに応え、発展専門化されたものとも考えられます。 私たちは、今後とも永年に亘って蓄積された確かな技術力をもとに、豊かな創造力を発揮し、 こうした時代の要求に応えながら、設計活動を進めていくことが与えられた本分であると考えます。